銭湯ガイドマイスター 優秀論文 山﨑 明彦


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銭湯とは、主要都市にある一般向けの公衆浴場で、都道府県ごとに定められた一定の入浴料金を支払えれば誰でも入浴できる。入浴施設は各国にあるが、日本的な銭湯があるのは韓国ぐらいで、外国人にとっては珍しい。

外国人が銭湯に対して興味を持つポイントは、日本人とは少々異なる。「浴場と脱衣所の間が素通しのガラス」、「くつ箱の木製の鍵」、「複数ある浴槽」、「入浴者を見張るような高い番台」など、日本人にとっては見慣れたものが、外国にはない。また、他人と一緒に裸で入浴する習慣もほとんどない。正に銭湯は外国人にとって「異文化」なのである。

この銭湯文化を海外に発信していく方法はいろいろあると思うが、「バックパッカー向け銭湯ツアー」を提案したい。外国人に銭湯を知ってもらい、入浴してもらい、銭湯ファンになってもらい、そして口コミでその良さを広めて行く。その第一は、手軽に低料金、短時間で参加可能な銭湯ツアーを継続的に開催していくことだと考える。

具体的には、旧山谷地区に宿泊する「バックパッカー」を対象としたツアーから始めたい。ご存じのとおり、バックパッカーは世界中を低コストで旅する若者達である。低コストで旅するためには、それなりの情報が必要で、宿で情報交換したり、他人の経験をホームページやソーシャルネットワークサービスを介して得たり、とにかく情報の収集・発信にたけた人達である。かつて日雇い労働者向けの簡易宿泊施設であった街が、都心に近く、治安も比較的良く(飲酒に伴うけんかなど事件はあるが、重大犯罪は多くない)、何より宿泊料が安いことが口コミで広がり、やがてガイドブックにも書かれるようになった。発信源は、もちろんバックパッカーである。

旧山谷地区は、南千住と浅草の中間のような位置だが、銭湯も多く残っており、足を延ばせば、浅草には天然温泉、御徒町には朝風呂もある。また、大衆向けの居酒屋も多い。

週2回程度の割合で、ガイド1名に対して外国人参加者が10名くらいのツアーを継続的(ここが重要)に開催して行きたい。週の1回目は、銭湯の利用法(入浴法)を教えて、その後、実際に入浴する。週の2回目は、入浴経験のある者(1回目の参加者など)を対象に、銭湯と居酒屋の組み合わせも面白いと思う。日本人でも初めての飲み屋は入り難いように、外国人にとっても居酒屋に入ることは勇気が要る。注文しないのに出てきて、料金に加算される「お通し」という不明朗なシステムも存在する。良く言ってしまえば、これも文化なのだが、予め説明しておかないとトラブルの元になる。

非常に平凡な企画であるが、観光というと景勝地や文化施設を訪れて、おいしい料理を食べる「ハレ」の部分と思われがちだが、庶民がそんなものをいつも食べている訳でもなく、実際の生活とは異なる。文化として、外国人に見て欲しいのは、日常生活の「ケ」の部分であり、一般人との交流である。

銭湯には、人工温泉、サウナ、ジャグジー、露天風呂など、いろいろな趣向があり、同じ企画でも、銭湯を変えることで別の楽しみがある。また、東京の銭湯に多い寺社建築様式やペンキ絵、タイル絵など目で楽しめるものも多い。
バックパッカーに仕掛けて、バックパッカーから発信させ、「SENTOU」が世界語になって欲しいものである。

最後に、日本は南北に長く、気候も異なる。だからこそ、各地に文化や郷土料理があり、銭湯にも地方色がある。ここでは旧山谷地区を例に挙げたが、同じことは各地でできるはずである。ちなみに私は、元旅行業で海外に数年間住んでいたので、外国人が間違って理解している日本のイメージに何回も出くわした。銭湯を切り口に、正しい日本文化が海外に発信されることを切に願う。


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