銭湯ガイドマイスター 優秀論文 下北沢 つかさ


一覧に戻る

ここでは、銭湯を全く知らない外国人に対し説明を行い、さらに銭湯ガイドツアーを実施することに関して述べる。

まず目的として、下記を前提とする。

・銭湯を理解し、さらに関心、好意を持ってもらう。
・銭湯と入浴を好きになってもらい、リピータ化し、他の外国人にもPRしてもらう。

銭湯を説明する前に、日本人の入浴へのこだわりを理解してもらう必要がある。日本人は清潔を好む民族であり、高温多湿な風土につき、身体を清浄に保つという入浴の機能は重要である。

特に日本人は身体を洗うだけではなく、お湯に浸かる、という点を大変重要視していることを理解してもらう必要がある。これは身体を温めるという意味だけではなく、精神的リラックスという効用もある。また古くから入浴は健康に良く、疾病治療にも効果がある点も興味を引くであろう。

日本人の多くは毎日の入浴が欠かせない、と理解してもらってから銭湯を説明する。

まず銭湯とは安価で入れる公衆浴場であり、日本中に存在し、入るために会員などの資格は不要で、外国人にも入れることを説明する。

老若男女、誰でも入るために、いろいろな人間が同居する、極めて公共性の高い社会的な場であることを分かってもらう。いろいろな人間が満足するためにマナーが存在するという点を理解してもらう。

非常に社会的な場所ゆえに、銭湯は古くから地域のコミュニティとしても機能してきた。また「裸のつきあい」という言葉があるように、ひとたび銭湯に入れば、身分、職業を超えて、個々の人間同士としての会話となる。という点も強調したい。人間の平等を説いた福澤諭吉が、銭湯の経営者だったというエピソードを紹介しても面白いだろう。

日本人はなぜ銭湯を好むのか、というポイントを理解してもらってからディテールを説明する。

古代の銭湯は宗教的な色彩が強かったが、江戸時代に庶民に普及し、文学や落語に、さらに現代では映画やTVの舞台としても登場し、長い歴史の中で日本人の生活に欠かせない1シーンだった、という歴史的な側面も解説する。戦後も、強い必要に応えるべく、焼け跡から多くの銭湯が復活した。また、震災の際、その復興の際も直後から銭湯が重要な役割を占めた。先の東日本大震災でも、直後に仙台の銭湯に行列ができたのは記憶に新しい。

さらに建築としての銭湯にも言及する。伝統的な破風造りの木造銭湯や、新しい設備を備えたビル型の銭湯など、様々なバリエーションがあることを理解してもらう。また浴室にはペンキ絵、タイル絵、さらに庭、池、鯉といったビジュアル要素も説明し、銭湯が単なる入浴のためだけでなく、日本的なエンターテイメント要素を含んだものであることを理解してもらう。屋号の由来の説明や、のれん、番台などのディテールも関心をひくかもしれない。

さて、実体験として実際の銭湯を案内することを想定してみる。銭湯を好きになってもらうのが目的であるから、嫌だと思う要素を入れないためにも事前の多少の聞き取りは必要である。例えば、熱い湯に入れないなら。ぬるい湯を備えた銭湯、裸になることにやや抵抗があるならフロント式の銭湯に案内するなどの配慮も必要だろう(特に女性では)。

事前に、入浴料金、タオル等の入浴道具の持参、また貴重品は持参しない、軽装の方が望ましい、などを説明しておく必要がある。

ここでは北千住の大黒湯をモデルに取る。北千住は歴史もあり、日本的な街も残り、庶民的な飲食店も多い。銭湯も多いので、いくつかの銭湯の外観をチェックしたり、当日の入浴銭湯の変更、追加も可能である。

適度に運動した方が入浴はありがたく感じるので、事前に街の散策をした方が良いだろう。北千住であれば、史跡や、いくつかの銭湯を目にすることができる。
入浴時に注意することとしては、

・湯舟の湯は皆のものであるので清潔に保つ。事前に身体を流す。タオルを入れない。
・脱衣場に上がる時は水気をぬぐう。
・他の人に配慮する。湯をかけたり奇声を上げない。
・ロッカーキーは常に身体につける。

初心者にはこの程度を頭に入れてもらえば良いだろう。

あとは存分に湯や設備を楽しんでもらい、また銭湯の中にある、日本的なビジュアルも感じとってもらえれば銭湯ファンになるだろう。

また入浴後の飲食は外国人を含む多くの人にとって楽しいものなので、これをセットにすれば、より銭湯の楽しみを深く記憶してもらえるかもしれない。


一覧に戻る