銭湯ガイドマイスター 優秀論文 中山 美子


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①銭湯について全く知らない外国人に対して、それをどう説明するか。

銭湯は地域に住む人たちが日々利用している有料の共同浴場である。
銭湯の歴史は長く、仏教の普及の目的で寺で入浴を提供するところから始まった。12世紀の頃にはお金を払って入る町湯が増え、江戸時代には町ごとに銭湯があった。

日本人は入浴が好きな国民で、銭湯は極楽とも言える場所の一つであり、昔から地域の社交場でもあった。
関東大震災で倒壊した銭湯を立て直す頃から、東京には豪華な東京型銭湯が増え、大変な人気であった。東京オリンピックの翌年1965年には、東京に2600軒もの銭湯があったが、家庭風呂の普及とともに利用者が減り、最近廃業が急激に増えている。

現在、東京で営業している銭湯は約800軒。営業時間は夕方から深夜のところが多い。利用者は地域住民がほとんどだが、入口で料金を支払い、ルールを守れば誰でも入浴することができる。

外国の風呂との大きな相違点は、浴槽内で体を洗わない、スパと異なり水着など一切身に着けないで入る、湯の温度が高いなどという点が挙げられる。
日本人と交流を持ちたい人、庶民生活に触れてみたい人は、恥ずかしがらずに是非銭湯を体験すべきである。

②銭湯ガイドマイスターになったらどんなコースプランをたて、どんな点に留意しながらお客様を案内するか。

銭湯ガイドを必要とする人たちは、おそらく日本人ではない。観光で来日した外国人か、来日後まだ日が浅く、日本文化に興味はあるものの銭湯に案内してくれるほど親しい日本人の友人がいない在日外国人と考える。銭湯に興味を持ってくれた貴重な方々に、私は日本人の友人として接したい。
さて自分が外国を訪れた時一番神経を使うのは、自分の振舞いがその国のタブーに触れていないかという点である。特に、宗教色の強い所、観光化されていない生活空間などは足を踏み入れていいものか非常に迷う。

日本においては、寺、神社、墓地、路地裏などが、これに相当するのではないか。日本の常識を守りながらガイドブックでは知りえないコースをガイドとともに安心して見学する、今回はこのような視点でコースを考えた。

私が案内したいのは、地元阿佐ケ谷から高円寺の町並み、寺、神社、銭湯である。

午後3時JR阿佐ケ谷駅改札集合。北口の世尊院に向かう。中杉通りをはさんで、左に大悲殿、右には本殿がある。いずれも対側の道からの方が建物を観察しやすい。本殿には立派な千鳥破風、唐破風、懸魚がみえる。大悲殿の隣には墓地があり、日本独特の墓石が見られるため歩道から金網越しに、そして陸橋の上から観察する。

次に、隣にある神明宮境内に入る。ここは地元の神社として人気があり、季節の行事が多数開催される他、結婚式も頻回にあり純和風の花嫁さんを間近に見られることも多い。能楽堂も備えるきれいな神社である。

神明宮を出て、3分のところにレトロな玉の湯がある。周囲に高い建物がないためシルバ塗装の煙突がそびえたって見えるので紹介。玉の湯の横から住居の間の細い路地を通り、杉並学院に出る。石川遼の出身校だと紹介して桃園川緑道に入る。ここは狭い道の両側に家が建ち並び、わずかに残った緑道の地面を少しでも緑化しようとみんなで努力している、東京の住宅地らしいところである。

緑道をはずれて高円寺南口の長仙寺に向かう。朱色の山門が立派だ。境内には観音様の石仏もある。本殿は大きく美しい千鳥破風だ。

長仙寺を出て、パル商店街を経由、JR高架をくぐり北口純情商店街を通り、最終目的地小杉湯に到着。小杉湯は改築する際に引き継いだ千鳥破風、唐破風、懸魚が見られる。寺や神社で見た宮造りを思い出し、十分に観察してもらう。

中に入る前に、銭湯ルールブック(未作成)を手渡し、日本人にとっては当たり前のことも含め詳しく説明し、マナーを遵守するよう指示する。中に入った後には日本語しか通用しない可能性が高い。お客様が他の人に迷惑をかけたり、恥をかくことがないようにロッカーの使い方やトイレの位置までなるべく教える。

あとは堂々と心ゆくまで広い風呂を楽しんでいただきたい。女性であれば一緒に入浴して、効果的な入浴法から、掲示物の説明、オカマ型ドライヤーの説明等補足したい。参加してよかった、又銭湯に来たいと思わせるガイドを心がけるつもりだ。

日本の観光業者はみな笑顔で丁寧な人が多く、観光客はそれに慣れている。見慣れぬ客に笑顔で挨拶してくれる銭湯を選ぶことも大切だと考える。


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